グループ会社Aのお話

とあるグループ会社「A」のお話である。
今回のお話は特定のどこかの会社のお話ではもちろんないつもりだ。なんだかどこかの会社が想起されても気にしないように。

登場人物(注:法人も人である)
AH:Aを統括する持ち株会社
AK: AHの子会社で、ARで開発された商品を販売する会社
AR: AHの子会社で、AHの包括的受託契約により商品を開発する会社

ARの開発者(達)が、その職務として著作(ソフトウェア開発)をしたとする。
そのソフトウェアは職務著作なので、著作者はコードを書いた開発者(達)ということにはならない。
AHの受託業務として開発を行っているので、AHが著作者人格権を持つことになる。
そして、販売するのはAKなので、当然AKは著作権設定契約によって(おそらく永久に)著作権を全て持つことになる。
もしもAHが消滅し、AKやARがAグループから離脱しても、AKは永久に著作権を持ち続け、一方、ARは永久に何の権利もない。

以前ライブドア(の某子会社)からの原稿執筆依頼の契約は受託契約であることを述べたことがあるが、つまりそういう仕事を請けると、著作者となることができない。(世に言うゴーストライターもそういう仕組みの下にある。)
ライブドアが消滅しても著作者人格権著作権も返っては来ない。
いやいや、特定の会社の話ではないのだった。

閑話休題

ARは、AHとの受託契約(開発)にはよらず、独自に研究業務を行っていたとする。
ARが研究発表で、ソフトウェアの存在を明らかにしたとすると、ARには著作者人格権著作権が発生する。
その後に研究成果を元に開発を行って商品を作ったとする。
すると、その商品の著作者人格権はAHとARが持つことになる(共同著作物)。AKはAHとARとの契約により著作権を得る。
さて、この状態でAHが消滅し、AKやARがAグループから離脱した場合はどうなるか?

まず、AHが存在しないので、著作者人格権を行使できるのはARだけになる。(たとえAH全ての資産をAK等が引き継ぐことになっていたとしても著作者人格権は譲渡できない。)
AKの著作権は3年経てば、(契約の更新がなされない限り、)著作者に返されなければならない(判例もある)。AHは存在しないので、ARに全ての著作権が返ってくる。
かくてARは全ての権利を取り返すことができる。

ということで、ARという会社は研究に力を入れると、同時に知財リスク管理にもなるのだ。