遅れたダイヤからの回復方法

尼崎の列車事故について、マスコミは「過密ダイヤ」を原因だとしている。が、これはとんでもない嘘であり、マスコミは事故原因を結果的に隠蔽しようとしている。

多くの鉄道ファンが指摘するように、宝塚線のダイヤは特に過密ではない。多くの大都市路線のダイヤは宝塚線よりはるかに過密である。

さて、ここからは尼崎列車事故から少々離れた議論をする。

後続の列車との時間間隔が短いことそのものは、列車速度を上げることを要求しないし、また列車運行の絶対的な正確性でさえも必ずしも要求しない。

列車の運行時間間隔の短い、「密度高いダイヤ」において、特定の列車が(例えばオーバーランするなどの)トラブルで遅れた場合、その列車と関係する列車運行を含むダイヤの回復は、当該列車だけがしゃかりきに「速度を上げよう」としても、全くそれは不可能なことなのである。

一度列車が遅れると、その列車が定時到着するはずであった駅ホームでは、遅れた時間分だけ「乗客が増える」。そのため、遅れて到着した駅では、定刻運行の場合よりも多くの乗り込み客があるため、列車の発車は「さらに遅れる」のだ。

こういうメカニズムのため、多くの乗降客を捌くために「密度高いダイヤ」が組まれている路線では、特定の列車が一度10秒でも遅れれば、ほぼ回復運転は見込めない状況になる。

このような「密度高いダイヤ」が組まれた路線で特定列車がトラブルで遅れた場合、定時性を回復させるためには、まず、ホームに乗客が通常以上に溢れるのをなんとかしなければならない。

列車が遅れているにもかかわらず、駅ホームの乗客を通常以上に溢れることをくい止めることは可能かと、いぶかる向きもあるかもしれないが、実は可能である。

遅れた列車よりも1本<前>の列車を「わざと遅れさせ」て、列車の運行間隔を通常に近づけるのである。そして、定時より後にホームにたどり着いた乗客を(その乗客にとっては本来より1本前の)列車に乗せることによって、ホームに乗客が溢れることを防ぐのである。

その「1本前の列車」も、遅れたことによってその列車への乗客が異常に増えることにより、遅れがどんどん増えることになる危険性があるので、「2本前の列車」も少し定時から遅らせる。「3本前の列車」も少しだけ遅らせる。こうして全ての列車を一度定時から遅らせて「列車の運行間隔を保つ」ことによって、列車の追突事故などの危険性も減る。そして定時運行への回復も「保たれた列車運行間隔」があって、初めて可能になる。

健全で、かつ「安全な」列車運行のために優先すべきは「定時運行を予定通りに保つこと」ではなく、「運行間隔を予定通りに保つこと」なのである。

乗客の飛び込み乗車やオーバーランなどによって、ダイヤ定時から特定の列車が遅れた場合、正確に「遅れ時間」(オーバーランの距離ではない)を申告し、後続列車だけでなく先行列車も「協調して遅らせる」ことによって、ダイヤの健全性は保たれ、安全が確保できる。そして運行間隔を予定通りに保つこと」ができてこそ、時間をかけて定時性を回復させることができるのだ。

「密なダイヤ」の意味を、敢えて曲解して事故原因だと糾弾するマスコミは、次なる事故を(未必の)故意に招いて多数の人を惨殺しようとしている。