転覆速度 (207系 at R300)

尼崎の事故は本当に悲惨な事故で、詳細を聞くたびに胸が痛む。
しかし、マスコミはもちろん、JR西も警察も事故調も再発防止という観点とはおよそかけ離れた責任論と、証拠(もどき)の奪い合いと持論の押し付けを繰り広げている。
これは、彼らがその組織の行動原理に忠実であるだけともいえるのだが、事故の真実無視のはなはだしさには我慢がならない。

事故の報道当初からずっと疑問なのは、R300での脱線危険速度が133Km/sだと報道されていることである。
せりあがり脱線の場合、精緻な実験結果に基づいた極めて詳細な検討を行なわない限り、脱線危険速度は割り出せないが、車両の転覆など、高校物理で習うベクトル演算を使えば限界速度は極めて容易に算出できるはずなのに、私が見る範囲では誰もそれを求めてない。

頭にきたので、ざくざくっと計算してみた。
207系の詳細な基礎データが見つからなかったので、一部は推測である。

特に空車車両の重心、乗客の重心が不明だが、ST-21などの目標値などをにらみながら、空車車両の重心高さは車両全高の1/3、
乗客重心は車両全高の2/3の点とした。

重力加速度[m/s^2] g 9.8
空車車重[kg] W 26000(先頭車)
空車重心高さ[m] H 1.38(4130/3)
人重[kg] w 6000(100人×60Kg)
人重心高さ[m] h 2.76(2×4130/3)
実車重心高さ[m] H' 1.63875
線路幅[m] D 1.067
カント[m] d 0.097
カーブ半径[m] R 300
速度[m/s] v 36.94444444(133Km/s)
加速度[m/s^2] α 0.972222222(ブレーキ能力スペック値)

車両横向き加速度[m/s^2] β=v^2/R 4.549639918

カント角 (rad) A=sin-1(d/D) 0.091034778
空車重心角 (rad) B=tan-1(D/2H) 0.368896506
実車重心角(rad) B'=tan-1(D/2H') 0.314731999

空車転覆加速度角 (rad) A+B 0.459931284
実車転覆加速度角 (rad) A+B' 0.405766777
実加速度角(rad) C=tan-1(β/g) 0.434639987

参考
http://homepage3.nifty.com/canada/Urban/207-2000%7Ejp.html
http://www.asahi.com/national/update/0503/OSK200505020052.html

いい加減な計算であるにもかかわらず、
空車で133km/hの時は 実加速度角<転覆加速度角 で転覆しないが、
100人乗車の時には同速度で 実加速度角>転覆加速度角 となって
転覆するという結果が出た。

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ところで、
http://www.rtri.or.jp/infoce/getsurei/1999/Getsu05/g120_5.html
に、蛇行動の検討がなされていて興味深い。

それによれば150Km/h以上で共振振動数0.5Hzの蛇行の危険性があるように読み取ることもできるだろう。

事故を起こした列車は事故直前に蛇行動を起こしていたとの報道もあるが、まさか150km/hなどの速度は出せるはずもなく、事故に至る経緯の解明を難しさを感じさせる。

乗客で「異常な横揺れ」を感じた人々に、その振動数を(体感させるなどしながら)証言してもらうことも必要に思われる。