通貨模造違反

ヨシナガ氏の日記「僕の見た秩序。」の2月2日記事「郵便局の広告がやばい」に物凄いスキャンダルが暴露されていた。郵便局が通貨模造違反を堂々としているというのだ。
http://www.dfnt.net/t/photo/0502.shtml#050202
(追記:ヨシナガ氏自身の手によりまとめ記事が出た
http://www.dfnt.net/t/photo/column/nisesatsu.shtml

記事によれば、郵便局が電車のつり広告として出しているポスターの背景は、なんとス#キャンされたお札が使われていたというのだ。これは明白に通貨及証券模造取締法に違反している。言い逃れる術は恐らくない。


通貨及証券模造取締法
http://www.houko.com/00/01/M28/028.HTM

第1条 貨幣、政府発行紙幣、銀行紙幣、兌換銀行券、国債証券及地方債証券ニ紛ハシキ外観ヲ有スルモノヲ製造シ又ハ販売スルコトヲ得ス 
第2条 前条ニ違犯シタル者ハ1月以上3年以下ノ重禁錮ニ処シ5円以上50円以下ノ罰金ヲ附加ス

(罰金の額は、その後刑法施行法によって変更されている)

閑話休題

刑事裁判において、行為を行ったこと自体は争わず、その法的意味(犯罪構成要件を満たすかどうか)を争った事例として、千円札事件というのがあるとウェブ上で指摘があった。

千円札事件とは、芸術家赤瀬川平原が、昭和38年ごろからいくつかのイベントに向けて作成した「模型作品」が千円札の模造であって通貨模造違反であるとされた事件である。問題となった赤瀬川の作品とは

・個展「あいまいな海について」において千円札の表側を写真製版の方法によって印刷し、その裏面に、展覧会の案内とかれのモチーフを刷ったものを案内状として製作し、それを現金書留封筒に入れて郵送した。
読売アンデパンダン展において、千円札の表を二百倍に拡大して描いた作品、約2メートル四方のパネルを、クラフト紙で梱包したもの、および表側だけを一色刷りした千円札の原寸大の模型多数を出品した。
・「ミキサー計画」において、模型千円札をパネルにすきまなく貼り合わせ、その一枚一枚を太いボトルでとめた作品、千円札の片面が並んで一色刷りされているクラフト紙で、日常生活のさまざまな物体を梱包した作品、それに原寸大の模型千円札多数など出品した。

これらのうち、千円札の片面を一色刷りにしたものすべてが罪として起訴された。

結局、一審の最後の最後に検察は訴因を変更し、犯罪の既遂の時期を「印刷」から「裁断」に変更したため、裁断しなかったものについては無罪となったが、その他の「千円札模型」は「模造」であるとされて赤瀬川は有罪となった。

千円札事件について法廷で何があったのかわかりやすいウェブ上の資料として
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/2001Hazama/02/2200.html
をあげておく。

なお、私はこの裁判の詳しい資料とされる
熊谷真美「赤瀬川原平資料集 千円札裁判の記録」(なごみ堂)
を探しているのだが、未だ入手できていない。

赤瀬川原平は有罪になった後もますますの活動を行い、一級の芸術家として名をなした。赤瀬川氏の名前は知らなくても、「トマソン」という言葉であれば私のような莫迦ですら知っている。千円札事件のことを知って、私の心には尊敬すべき人物として刻まれている。

さて、赤瀬川氏は、今回の郵便局の広告を見てどのような評論をするであろうか。