「飛行ロボットとしては現在、世界で最も小さく、軽くすることができた。」

うーん。

この飛行ロボットは、ヘリコプターに似た形で、プロペラの直径がおよそ13センチ、高さはおよそ8センチで、電池を含めた重さは12グラムです。大手精密機器メーカーの「セイコーエプソン」が、時計の精密部品を製造する技術を生かして開発しました。都内で行われたテスト飛行では、飛行ロボットはふわっと浮き上がったあと、空中で静止するホバリングに成功しました。地上のパソコンにあらかじめ飛行ルートを記憶させておけば、パソコンからの無線の指示で自動的に目的地に向かって飛ぶことができるほか、上空から撮影した画像を無線を通じて送ることもできます。開発にあたった担当者は、「飛行ロボットとしては現在、世界で最も小さく、軽くすることができた。将来的には災害現場や人が入れない狭い場所などに飛ばして画像を送ったり、監視したりすることが可能になる」と話しています。 08/18 17:30

このニュースを見て、おかしいと感じました。何がどう新しいのかさっぱり伝わってこないのです。小さい飛行装置は既に開発されていたはずだがという違和感でいっぱいです。とりあえず「飛行ロボット」に特別の定義があるのではないかと調べてみましたが、やはりこの言葉に新規性を表す特別の意味はないようでした。

次に、記憶を頼りに小型軽量の飛行装置の記事を探しました。

The award-winning Black Widow, developed with DARPA sponsorship, is a six-inch, electrically powered aircraft with a small camera that flies for 30 minutes at a range up to 1.8 km from the ground station while downlinking live color video.

上記記事のリンクなどをたどればわかるように、AeroVironment社は、翼幅6インチ(約15.2cm)、56gのMAV(MicroAir Vehicles: 超小型飛行装置)を開発し、1996年に既に9秒間の飛行に成功し、さらに1999年には1.8km、30分の屋外飛行をBlack Widow号によって達成しています。Black Widow号には飛行中の映像を送ることのできるカラービデオカメラが搭載されていました。*1

また米国ではMAVの大会が毎年開かれており、これより軽量なMAVはたくさんあるようです。韓国でもSPOTというMAVが開発されていたことがあるようです。

さて、今回のセイコーエプソンの飛行ロボットはどこが新しいのでしょうか?米国に遅れること5年で、ようやく2cm小さくしたというところが新しいわけでは決してないのです。どうしてそういうことをマスコミは伝えないのでしょうか?*2

米国でのMAV開発を中心的に支援してきたDARPAの描く新世代MAVのコンセプト(つまり未完成)の図*3を見ていただければ、少しは「セイコーエプソン、なかなかやるようだねぇ」と感じられますでしょうか。



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*1:AIAAに掲載されたBlack Widowに関する論文:http://www.aerovironment.com/area-aircraft/prod-serv/bwidpap.pdf

*2:セイコーエプソンのプレスリリース:http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040818.htm

*3:Micro Air Vehicle (MAV) Advanced Concept Technology Demonstration (ACTD): http://www.arpa.gov/tto/programs/mavact.html