刑事事件報道の周り

佐々木俊尚氏のWinny幇助犯公判傍聴記事に関連して、証言した警察官への尋問内容が話題になっている。
http://www.asahi.com/tech/apc/050217.html


プロパガンダ

まず理解しておくべき背景として佐々木氏の記事スタンスについて書いておくべきだろう。

yomoyomo氏が「「諸君」における佐々木俊尚氏によるWinny裁判レポート記事」(http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20050107)にて佐々木氏の記事を紹介して批判しているが、ここから孫引きさせてもらうと佐々木氏は

===引用ここから===
ところが私の期待とは裏腹に、●●被告はみずから確信しているはずの思想についてはいっさい口にしなかった。それどころか、

ウィニーの開発は、新型のソフトを作り出すことができるかという技術的な実験として行ったもので、著作権侵害行為の手助けをするという意図はありませんでした」

 と自身の思想と哲学を否定するような発言を延々と続けたのである。しかも用意した意見書を、ただ早口で読み上げるという方法で――。(p.161)
===引用ここまで===

なんてことを書いている。yomoyomo氏は「個人的には噴飯ものの主張であると思う。」と評し、あるいはまた佐々木氏の「面白おかしくとりあげる」態度などを批判されている。

が、私は佐々木氏のやっていることはそれに留まらないと考えていた。私はそもそも47氏

===引用ここから===
 そんな中で、著作権破壊の狼煙を上げたのが●●被告だった。

 彼は確信犯としてレッシグ思想の実現を目指し、著作権概念の崩壊をはかったのである。その試みはテロリズムに近いものではあったものの、著作権問題に懸念を抱く人たちにとってある種のヒロイックな行為と映ったのは否めない。(p.165)
===引用ここまで===

などしたというような言説は警察のデッチアゲではないかと当初から疑っていた。警察の「47氏著作権システム破壊者であり、すなわち悪人」プロパガンダに対し、佐々木氏は【それと知りつつ】(←ここ強調)乗っかっているのではないかと思ったのだ。

その疑われていた内容が、いよいよ弁護側から立証されようとしたのが、今回話題になっている警察官への反対尋問だと位置づけることができる。


【取調べ】

そもそも警察で行われる供述取録のための問答は滅茶苦茶である。ヤメ検弁護士としてよく知られる落合弁護士が、47氏への取調べについて想定される問答を書いている。(http://d2.hatena.ne.jp/yjochi/20050217#1108638441

常識人ならば、検事の経験を踏まえて書かれたこの想定問答を見て、「ふーんなるほどこんな問答があったかも知れない」と納得するだろう。だが、敢えて言わしてもらうならば、こんな甘い問答がなされたはずはないのだ。

落合弁護士は元検事であるため、「捜査側」(検察、警察)に詳しいことは事実だし、よくそれに言及する。が、彼とて自分の人生を否定したくはないし、また「捜査側」といらぬ揉め事を起こしたくないはずで、「捜査側」の体制については、霞がかかったような物言いや、むしろ擁護的な発言になってしまうようだ。

そのような捜査側擁護発言は「白川勝彦Web 政治理念 忍び寄る警察国家の影」(http://www.liberal-shirakawa.net/idea/policestate.html)に対するコメント(http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041208#1102517649
大阪高検公安部長三井環氏についての 「手錠をかけられた検事」という番組に対するコメント(http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050207#1107705982)などに顕著に見られる。

もっと直接的には、自身が検察官としての取調で「虚偽自白」をさせてしまった体験を語るエントリ(http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050131#1107104723)を仔細に読めば、随所に言い訳やごまかしの表現を見ることができる。

イムリミットなので一旦ここまででポスト
(続く)