「日本」の文化

近くに、老夫婦が園長と理事長をしている保育園がある。元小学校の校長を定年退職したあと、自己の財産を投げ打って設立したものとのことだが、もう創立30年以上にもなる保育園だ。古風な戦前風の教育理念理念に基づき、きちんとしつけと教育を行うことを信念とされている。先ごろの「教育基本法改正」などのことは、喜んでおられるようだ。

幼児への教育として、音楽教育にも力を入れておられるが、古い唱歌などが多い。しかしながら、唱歌の中でも、この園長と理事長が絶対に歌わせ(たがら)ない歌があって、その1つは「われは海の子」である。

さて、河合隼雄文化庁長官の希望だかなんだかで、「日本の歌百選」というのが文化庁で選ばれたそうである。
http://www.uta100sen.jp/

「日本の歌」とかいう民族派が大喜びそうな大上段なタイトルの割には、外国の歌が少なからず混じっていたりする。子供が無邪気に「日本の歌を歌います」と、外国民謡を当の国の人の前で歌って恥をかくのは必至だが、まぁこんなのは、日本が音楽後進国で「民族として劣っているのだ」と自嘲してれば済むかも知れない。いや、済ますなよ。>憂国の士

しかし、一方で左翼が目をむきそうなことに、「われは海の子」がそこに選ばれている。歌詞が(JASRACの許可も得たもののようで)、
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/uminoko.html
に掲載されているので是非読んでいただきたい(音も鳴るので注意)。通常3番までしか紹介されていないので、ご存じない人もいるかもしれないが、明示的に軍を賛美する内容が含まれている。(他に、「里の秋」や「蛍の光」にも、たいがいな内容の歌詞が含まれている。)

防衛「省」が昇格のついでに「美しい日本の歌」などと、お調子に乗って「省歌」にしたわけではない。これは、あろうことか文化庁が、「親から子、子から孫へ〜親子で歌いつごう 日本の歌百選」としている歌なのだ。

よぼよぼの園長と理事長が、それだけは止めろというこの歌を、子にも孫にも、諸外国の人々の前で「日本の歌として」高らかに歌えというのだろうか?いや、教育関係者に聞くと、文科省はこの「日本の歌」を、学校現場で歌えと強制してくるだろうと言う。河合隼雄は、戦争のことを忌み嫌っていたはずだが、こういう曲を彼は「日本の歌」としたかったのだろうか。昏倒したままの彼を平手打ちにして叩き起こし、聞いてみたい。

まぁなんにせよ、これらが「日本」の文化なのだ。恥ずかしい。